大林組

 
IPランドスケープ®という言葉の浸透に俯瞰図が役立っており、経営層にまで届いています



社名
株式会社大林組

POINT

  • 他社や特許庁での利用実績がVALUENEX導入の安心感に繋がった
  • 技術開発を進める方の感覚とマッチした俯瞰図ができて共感を得られた
  • 他社の動向や自社の立ち位置の分析のため、VALUENEXを含め最適な手法を選択し業務を推進
  • 他社の思わぬ変化の兆しを発見できた
  • 経営層も含めてVALUENEXを認識している状態
  • 分析結果から仮説が膨らみ、アイディア次第で特許に限らず様々な使い方が可能。 特許分析をしたことが無い人もまずはトライして欲しい

株式会社大林組様は、「MAKE BEYOND つくるを拓く」をブランドビジョンに、創業130年の歴史の中で培われた技術を活かし、人々が生活していくうえで必要不可欠な社会基盤、都市の象徴となる建造物、さらには都市全体の未来を想像する都市開発などを手がけてきた企業様です。「国内建設」を中核とし「海外建設」「開発」「グリーンエネルギー」そして「新領域ビジネス」という5分野で事業を展開し、多方面から社会の安全・安心に取り組まれています。今回、VALUENEX Radar Documentsをご利用頂いている知的財産戦略部の染川様と永久様に、ご導入背景やご利用方法について、お話を伺いました。

 
 
 
 

染川 大輔様
技術本部
本部長室
知的財産戦略部
調査課 課長
博士(工学)


永久 優子様
技術本部
本部長室
知的財産戦略部
担当課長
 
 

ご導入経緯について


他社や特許庁での利用実績がVALUENEX導入の安心感に繋がった

所属部門のミッションについて教えてください

染川様:私たちは技術本部にある知的財産戦略部に所属しており、技術開発の入口と出口を考えることをミッションとしています。入口とは技術開発方針の策定に向けた社内外の動向や自社の現状調査のことで、出口とは出来上がった技術開発の展開方法を検討することです。その他の役割として、技術開発戦略を検討する会議の事務局も行っています。

弊社ツールの導入に至った経緯は何でしょうか?

染川様:コーポレートガバナンスコードの改定を機に社内で知的財産活用の機運が高まったことがきっかけです。また他社でも導入されていることが信頼性の担保に繋がりました

永久様:VALUENEX Radar自体は五年前から知っていました。当時は社内関係者にデモを見てもらい検討をしましたが、料金や活用方法にハードルがあり導入には至りませんでした。ただこの一年で機運が高まったことで導入となりました。また、信頼性の観点で言えば、特許庁の資料でVALUENEX Radarがよく使われていたことも納得を得やすかった点として挙げられます。

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ご利用開始時の取り組みについて


説明を聞いた人たちの感覚とマッチした俯瞰図ができて共感を得られた


導入に向けた社内調整では、どのようなハードルがあり、それをどう乗り越えられましたか?

永久様:社内的にはツール導入に適したタイミングだったのですが、様々なツールがある中で、目的は何か、各ツールで何ができるかをはっきりさせる事がハードルでした。解決のために他企業が公開している資料を調査したところ、多くの資料で主に二つの視点で資料が構成されていることに気づきました。一つはVALUENEX Radarのような特許全体を幅広く見る視点、もう一つは個別特許を評価する価値付けの視点です。これら二種類があると進めやすいと判断し、VALUENEX Radarに加えて他ツールも導入することにしました。

染川様:VALUENEX Radarの使い所や、出てきた結果をどう見るか、そこから何が言えるのか、といった説明を社内に如何にわかりやすく伝えるかが重要と考えていました。そのため、導入時の前半はツールが本当に利用可能なのか技術本部内での検証作業を行い、その後他部門に展開する流れで進めました。他部門に説明する際は、技術本部内での検証作業を通じて印象が良かった図を利用するなど、関心を持ってもらいやすくする工夫を取り入れながら実施しました。また、当社の技術開発は分野が多岐に渡っています。全てを追いかけるのは難しいため、まずは各事業部の企画系の部門と技術開発を進める人たち向けに絞って分析し、専門性が高い人へ俯瞰図の結果と認識が合っているかの意見を聞く取り組みを実施しました。

社内理解の促進に取り組まれていかがでしたか?

染川様説明を聞いた人たちの感覚とマッチした俯瞰図ができて共感を得られたというのが大きかったです。共感を得られなかった俯瞰図ももちろんありますが、技術開発をしている人たちの肌感覚として持っているトレンドに対して、俯瞰図から得られた結果を確認することで、整合性を定量的に確認することが出来ました。 一方で最初はどういった見せ方をすればよいのか分からず手探りで試していて、とても狭い専門分野だけを分析した際には離れ小島がたくさんできるだけで意味を見いだせない事もありました。VALUENEXカスタマーサクセスチームにも相談をしながら使い方や見せ方の試行錯誤を経て、部門外に持っていくことが出来たのですぐに誰でも使えるツールではないようにも感じます

VALUENEX Radar利用当初はどのような解析からスタートされましたか?

永久様:先程お伝えした検証作業において、母集団をどれくらいの広さで見るとVALUENEX Radarが最も有効に機能するのか、という観点でチーム内で議論し、分析範囲を見定めるところからスタートしました。具体的には分析範囲を三つに分けて同時に検証しました。最も広いのは業界全体の同業他社と自社という範囲で、狭い範囲だと木造建築やコンクリートなど一つの分野に絞った比較になります。試したところ、一番狭い範囲まで絞ってしまうと領域が細かく分かれすぎて意味を見いだせない事がわかり、逆に広過ぎると契約件数の上限にひっかかるので長期間分の分析を一度にかけられない事がわかりました。

VALUENEX Radar利用当初の自分に何かアドバイスするとしたら、どんな事を伝えますか?

永久様:母集団の作り込みについてです。普通の特許分析のイメージでは、母集団の切り出しに神経質になると思いますが、VALUENEX Radarの場合には、逆にいろいろと混ざっている方が面白いです。例えば特定分野の分析をする場合でも、異業界の特許が混ざっている方が新しい発見があったりしますので、いわゆるノイズを気にして神経質に切り出さなくても良いかと思います。

染川様:使っていくうちに気づいたのですが、分析結果から母集団を作れるので、ざくっと特許の塊を俯瞰図にし、特定の部分だけを母集団として抽出して再度分析をかけ直す、という分析のやり方の方が、最初から切り出そうとするよりも圧倒的に効率が良いです。それが最初から分かれば効率は全然違ったと思います。

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ツールのご利用について


他社の動向や自社の立ち位置の分析のため、VALUENEX Radarを含め最適な手法を選択し業務を推進


業務全体に対する分析業務の割合はどれほどでしょうか?

染川様:分析業務は締め切りの波があるので、延々とやらなければならない時もあれば、しばらく触らない時もあり、一概には言いづらいですが平均すると二割くらいです。 社内の大きな会議でこういった資料が欲しいと言われた時に取り組む場合や、次年度の開発テーマとして何に取り組むかを募集するタイミングでは様々な分野を見る必要もあり、社内の業務サイクルの中で忙しさが出てきます。「他部門がこんなことしているけど」と、分析に関する問い合わせや依頼が来たりもします。

分析はどのようにスタートされますか?

永久様:社内会議の中で特定のテーマが出るので、そのテーマに関連する”何か”を検討し、どういった事をすれば新しい知見が得られそうかを検討します。最近は他社と自社を比べて、他社の状況や自社の立ち位置を明確にする事を要求される場合が多いです。おそらくこうだろうと仮説が出始めた時に、VALUENEX Radarを使うのが一番良いのか、他のツールを使う方がそれを示しやすいのか、トライ&エラーで進めていきます。例えば、今流行のカーボンニュートラルやコンクリートの分野がテーマになれば、その分野がどういった状況なのか、何について調べるのかを検討するところからスタートします。自社と他社で特許の出し方にどういった違いがあるか、他社がどういったトレンドを持っているかなど、調べたい観点からスタートし、それに応じた母集団を作ります。

分析業務はどのように分担をされていますか?

染川様:一つの俯瞰図を作って終わりではないので、様々な切り口で分担して進めています。最近は特許だけでなく論文の分析も試していて、私が特許、永久が論文の分析といったように、情報ソースで分担しています。例えば、同業他社が同じ期間で出している論文と特許の違いを比較しています。その結果を元に、この分野については特許を見た方が情報を得やすい、こちらの分野は論文を見た方が情報を得やすいなど、分野ごとにチェックすべき情報ソースの優先度をつけられるのではないかと考えています。 当社の事業性質上、研究開発をしていてもお客さんの要望で外部には公開できない場合や、自社で全ての技術開発をしているのではなく、下請けの業者が持っている特許技術を使う場合もあります。自社で技術を持っている分野と、他社の技術を使っている分野との切り分けがあり、論文は出ているが特許は出ていない分野があれば、自社の持っていない技術を使って論文を発表している可能性があります。そういった場合に、特許のみを追いかけても何も動いていないように見えてしまいますので、それぞれの情報ソースを分析しています。

分析スキルを上げるために、何か組織として取り組まれていることはありますか?

染川様:部内で複数のメンバーが使っているので、それぞれが行った分析結果を社内で共有するようにしています。他の人の切り口を見て気づくこともあるので、結果の共有が一番かと思っています。

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活用後の様子について


他社と自社の比較をする中で、他社が思ってもみないところに手を伸ばしていることに気が付けたことがありました


弊社ツールからどのようなアクションや成果へ繋がりましたか?

染川様IPランドスケープ® という言葉と俯瞰図が強固に結び付いて経営層にまで浸透しています。中期経営計画でもIPランドスケープを通して知財を全面的に使う事を前提とすることが盛り込まれました。知財活用の認識が社内的に変わってきています。(詳細はこちら、中期経営計画 P20)

永久様弊社経営層も含めてVALUENEX Radarを認識している状態です。

VALUENEX Radarの利用で面白味を感じた事について教えて下さい。

染川様誰も気づいていないところに気が付けたことです。これまで他社と自社の比較をする中で、他社が思ってもみないところに手を伸ばしていることに気が付けたことがありました。詳細が気になり該当特許を確認すると、思ってもみないところと協業をしていて、いつの間にこんなことをしていたのかという発見がありました。今後着手する取り組みをプレスリリースで発信する企業もあれば、成果が出るまで発信しない企業もあります。取り組みが発信されなければ気付かないままになるので、変化の兆しを発見できたことが印象的でした。

導入前と導入後で何が大きく変わりましたか?

永久様:従来は文献を一件ずつ細かく見る事が主でした。それも継続はしていますが、さらに俯瞰することが加わりました。

染川様:特許やその他の情報ソースも含めて、分析や結果の出し方にパターンが増えました。棒グラフやバブルチャート以外に俯瞰図という出し方が可能になり、俯瞰図の中で特定箇所の時系列変化を見るなど、分析の見せ方とストーリーも作りやすくなりました。

俯瞰図という人目につきやすい結果の出し方が可能になったので、今までとは違う事が始まっている、という事を社内に印象付けるきっかけとしてもありがたいです。一方で俯瞰図があまりにキャッチー過ぎて、分析イコール俯瞰図という思考になる人がいて、これだけが分析ではありませんという説明が逆に必要になるような想定外の対応が必要となりました。

弊社ツールを通して、今後ご担当業務をどのように推進するご予定ですか?

染川様:トレンドの把握は有効な分析内容なので、今後は定点観測しようとしています。また、部門単位や幅広く見ることなど、分析の範囲を変える作業も、もう少し試さないといけないと思っています。

弊社ツールにおいて、改善してほしいポイントについて教えてください。

永久様:単語の区切られ方の影響で、出力される複合語が間違ったテクニカルタームになっている場合があるので、そこに相当する情報をアップデートして欲しいです。こんなところで切ってしまったら何かわからないよ、という単語が出てくることがあります。

染川様:類義語が別クラスタに分類されてしまうケースもあります。例えば空調機とエアコンが、近くにはプロットされているものの別クラスタになっている場合や、俯瞰図の端にある小さなクラスタで、何でこちらのクラスタに入っていないのかと疑問に思うケースもあります。 その他には、クラスタの特徴語に応じて座標をある程度固定できると良いです。分析毎に最適化されていることは分かりますが、例えばコンクリートに関するクラスタはいつもこの辺りに配置したい、といったことを感じます。特許と論文それぞれを分析して、類似のキーワードを持つクラスタでも俯瞰図により座標が異なったり、定点観測をする上でも、母集団が変わるとこれまでのクラスタ配置を引き継ぐことが出来ず、座標が毎回変わったりしてしまいます。

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導入検討中の企業様へ


分析結果から仮説が膨らみ、アイディア次第で特許に限らず様々な使い方が可能。 特許分析をしたことが無い人もまずはトライして欲しい


導入を検討されている企業様へ一言お願いします

永久様:知的財産を扱う部門に長年いたわけではないですが、それでもVALUENEX Radarを活用できています。VALUENEX Radarは直感的に操作ができますので、まずはトライしてみると良いと思います。分析結果を見ている中で仮説が膨らむこともあり、とても楽しく取り組んでいます

染川様:今までの特許分析と似ている部分もありますが、基本的には異なっており、特許分析はこうあるべき、と固まっている人ほど使いづらいように感じたので、特許の分析をした事がない人にこそ使って欲しいと思います。また、アイディア次第でいろいろな使い方ができるので、これは特許を分析するためのツールだと決めてかからない方が面白いと思いました。

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インタビューへのご協力誠にありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。



掲載内容は取材当時のものです (2023年4月20日掲載)
※ IPランドスケープは正林国際特許事務所所長 正林真之弁理士の登録商標です